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阿部裕行多摩市長や保坂展人世田谷区長らが「市民発電所」について議論するトークライブが5月28日、新宿歌舞伎町のライブハウス、ロフトプラスワンであった。およそ150人の来場者が熱心に耳を傾けた。(文・東江 慧)
このトークライブは、多摩市を中心に自然エネルギーの普及に取り組んでいる多摩循環型エネルギー協会(多摩エネ協)の主催で、同協会代表で写真家の桃井和馬氏、同事務局長の高森郁哉氏、自然エネルギー財団の大林ミカ氏、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の古屋将太氏、ノンフィクションライターの高橋真樹氏も登壇した。(上写真:左から高森事務局長、桃井氏、保坂区長、阿部市長、高橋氏、古屋氏、大林氏。江刺莉沙撮影)

阿部市長は11年秋に多摩市が全国で初めて原発事故を盛り込んだ非核平和都市宣言を制定したことを紹介すると、会場から大きな拍手が起こった。また、「自由民権の故郷である多摩から、市民がエネルギー政策に関わっていこうという考えの下で生まれたのが多摩エネ協だ」として、市内での自然エネルギー普及を目指した取り組みに期待を寄せた。
2011年3月の東京電力福島第一原発事故直後の区長選挙で「脱原発」を掲げて当選した保坂区長は、東電に対して地域ごとの電力需要の公表を求めたり、区の施設の電気契約を入札制にして特定規模電気事業者(PPS)に変更した取り組みなどを紹介。これに対して阿部市長が「PPSもクールシェアも多摩市のほうが先だが、世田谷区ばかり注目される」とぼやき、会場の笑いを誘う一幕もあった。

昨年12月の衆院選で、原発の再稼働を主張する自民党が再政権交代したことが話題にのぼると、高橋氏は「自民党の得票数は減っているのに、自民党が勝つということは、日本という国で民主主義がきちんと考られて来なかったということ」とし、大林氏は「しばしば若者の無関心が問題視されるが、人口が多く影響力の強い50〜60代以上の意識を変えることも重要だ」と指摘した。
エネルギー政策への若者の参加について、古屋氏は「日常的にエネルギーのことを考えている若者なんてほとんどいない。エネルギーは社会を構成する重要な要素だと気付く機会があることが重要。ISEPのインターンや多摩エネ協の次世代リーダー養成プログラム等のように間口を開いておくことが大事」とし、高森氏も「地域で自然エネルギーを増やす活動をしている仲間は物事に柔軟に取り組もうという人が多いので、若い人たちもどんどん意見して参加してほしい」と若者の参加を呼びかけた。

終盤、桃井氏は「携帯電話もiPadも1割の人が使い出してから爆発的に普及して、当たり前のものになった。たった1割が変われば、社会は変わる。それぞれのタレントで、社会を変えていこう」と総括した。
来場した大学生の男性は「エネルギー政策は長期的なものなので、若者が積極的に携わるべきだと感じた」と、トークライブの感想を語っていた。
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写真:立ち見が出るほどの盛況に、ロフトプラスワンの関係者も「こんな固いテーマでこれだけ入るのは珍しい」と驚いていた。(東江慧撮影)