多摩市・阿部市長インタビュー(1)| 多摩ニュータウン.com

多摩市・阿部市長インタビュー(1)

たまプレ!は8月6日午後、多摩市役所本庁舎の市長応接室にて、阿部裕行市長へのインタビュー取材を行った。今回から3回にわたりその内容をお届けする(続きは12日、13日に掲載予定)。なお、本文中のリンクは当サイトの過去記事へ、ページ末の[参考リンク]は多摩市ホームページなど外部のサイトへそれぞれ張られている。

聞き手:高森郁哉(たまプレ!編集長)
写真撮影:Ami Kawada

■新市長としての実感

――4月の多摩市長選挙で他の2候補を破り当選、初の民間出身市長として職務に着手されてから約4カ月が経ちました。これまでお仕事を手がけてこられた中で手応えはいかがでしょうか。

私自身が今まで行政の経験や議員の経験というものがなく、まったくの民間サラリーマンからの転身ですので、すべてが初体験のことばかりでした。市政のトップであるとともに、市民14万8000人の代表として市役所の中で働く。つまり、市役所を代表するという立場と、市民を代表する立場と、2つの顔があるわけです。今までの民間サラリーマンとはまったく立場が違う、毎日が新鮮な驚きに満ちていて、当たり前ではありますが今は鮮度抜群の状態だと思いますし、フレッシュな気持ちで4月21日から登庁してきました。

手応えということになると、これは市民の皆様にどう評価していただくのか、ということに尽きるのですが、まだ今のところは若葉マークを付けた状態です。いわゆる「阿部市政らしさ」というのは、これからどんどん出していかなければならないと思うので、今はとにかく毎日がんばって走っているという状態です。

――市長の仕事と民間企業の仕事を比べた場合、どのような点が大きく異なると感じていますか。

分かりやすく言うなら、民間の場合は消費者のみなさんにいかに商品を買っていただくか。そのことに全力を尽くせば、結果がきちんと出てくるわけですよね。また、良い悪いといった消費者からの指摘も受け、そのことを励みにして次の商品を開発していくことになるでしょう。

一方、行政のトップになると、単に商品開発をして、良い評価をもらえればいいというだけでなく、ここに住む市民全員にとって、いかにその商品を理解していただき、全員が使えるようなものをどう開発していくのか。しかもそのときに、その商品が特定の人だけでなく、全員が共有できなければならない。これは難しい課題です。ただ一方で、職員の皆さんと一緒に仕事をしていて感じるのですが、やはりそこに生きがい、やりがいを求める人たちが多摩市役所の職員として入ってこられたと思うわけです。公務員はよく「全体の奉仕者」と言われますが、全体の奉仕者というのは、どんな場面でも、多摩市民全体にとって自分のしている仕事がどうなのかということを、常に自分の中でも評価しながら、結果としては市民の皆さんからの評価も受ける。二元代表制ですから、議会からのチェックも受けていく。そういう仕事として考えると、民間の場合とはかなり様相が違うということが、私自身実感しています。

首長はよく社長にたとえられ、私自身もそう言われることがありますが、かなり違いがあります。従業員の生活だけを考えていればいい、あるいは株主のほうだけを見ていればいい、というわけではないのです。では、会社でいう株主が市民に相当するのでは、とも言われますが、これもちょっと違うように思いますね。出資者の場合はその会社が育つと思うからこそ株を買うのです。でも、住んでいる市民はずっとこの地に、それこそ親子三代、あるいははるか江戸時代、さらに昔から住み続けている人もいるし、あるいは一方、最近このまちに引っ越してこられた方もいます。そういう状況の違いもあり、行政の仕事は独特の難しさがある反面、非常に面白いとも思い始めています。

民間との違いは、数字で示せる仕事だけではない、市民の皆さんの健康であったり命であったり、そういう日々の生活を維持していくための目立たない部分、縁の下の部分で力を発揮していかなければならない、というところにもあります。障害を負ったり、介護を受ける、あるいは保育園に子どもを預けるなど、困ったときに役所を頼るのではないでしょうか。そうでなければ空気のような存在かもしれません。目立たずに役に立つ、という点も民間企業との一つの違いでしょうか。主役はあくまでも市民お一人おひとりですから。

■多摩市議会6月定例会について

――6月定例会では、所信表明に対する議員からの質問や意見を受け、議論を交わした中で、新たな発見はありましたか。

6月の議会は緊張して迎えましたが、私としては先述の通り今まで議会の議員経験もありません。議会に臨むというのは市長になってからがすべて初めてで、フレッシュな経験でした。私としては特に今回所信表明を述べるということで、心がけたことは、誠実に誠意をもって、議員の皆さんに答えられることはすべて答えていくということ。議会制民主主義というものは、議員と市長が一対一できちんと議論する中で課題を整理し、そしてそれを市民の皆さんに見ていただくことによって今まちがどういう方向に向かおうとしているのか、その大きな枠組みを示す場でもあると私は思っていましたので、そうした思いは傍聴に来られた市民の皆さんには伝わったかな、とは感じています。

――議員、市職員を含め、合意形成はどの程度できたと思いますか。

そうですね、所信表明はいわば総論なので、まちづくりの方針や、私が考えていること、何をしたいかの背景、特に中央集権から地域主権へという大きな流れがあり世の中全体が変わっていく中で、多摩市として自治自立していくためにどうすればいいのかという、現状認識の部分については、きちんと理解をいただいたと思っています。ただし、所信表明の中で述べた「持続可能な住宅都市・多摩の再生」など、各論についてはまさにこれからで、次年度の予算にどのように反映させていくか、市民の皆さんと議員の皆さんとの間で合意を築いていく必要があります。

それから今、第五次総合計画というものを策定中です。この計画は、これから先20年後の多摩市をどう描いていくのかを定めるもので、平成23年度からスタートします。その中でまた、基本計画というものも作っていきます。基本計画は、今回から選挙で選ばれた市長の任期、4年をワンクールとするという形になり、その点で今までの第四次総合計画とはかなり違います。所信表明で述べたようなビジョンや課題を第五次総合計画の中に反映させていく作業を、市民の皆さんと共に行うことになります。ですから、その内実が問われるのはまさにこれから、と思っています。

――第五次総合計画の中に具体的に盛り込んでいくものが、阿部市長としての仕事の中でも重要なミッションになってくるのでしょうか?

そうですね。ただ、今は右肩上がりの時代ではありませんし、財政的に言えば多摩市は市税の占めるウエートが非常に高いまちでもあります。今後、団塊の世代の皆さんがリタイアされるなど、まち全体が高齢化の道のりにありますので、財政的な担保がどの程度できるのかということも、4年後、10年後をきちんと見据え、いわば地に足が着いた政策として提案していく必要があります。これは国でも同じことが問われていますけれども、議会も市民の皆さんもそういう観点で見ているでしょうから、夢は夢として描いても、その夢が本当に実行可能なのかどうか、説明責任を果たせるような形で進めていきたいです。

地域主権への流れの中、自治自立するまちを作っていくうえで、自覚と責任を持った市民一人ひとりの皆さんが主役になります。市民がみんなで一緒に汗を流していくわけで、行政が主体となってまちづくりをするわけではありません。地域主権時代の一番の鍵は、そこに住む14万8000人の市民に「自分たちのまちの計画だ」と思っていただけるような仕掛けと仕組みを作って、第五次総合計画を作ることだと私は思っています。

――特に市民の関心が高いと思われる行政評価市民委員会と地域委員会のうち、市民が主役という点では、地域委員会が第五次総合計画の中に盛り込まれる一つの仕掛けになるのでしょうか。

行政評価市民委員会は他の自治体では「事業仕分け」などの言葉を使っていますが、こちらについては10月に開催するということで公募や無作為抽出で市民委員を募っている段階です。この行政評価市民委員会の活動は3年くらいを予定しており、その中で市民の目から見た市の行政の仕組みや、税金をどう投入していったらいいのかということを、市民の皆さんに自分の手で評価していただこうというものです。これは第五次総合計画を築き上げていくうえで、基礎的な部分になってくると思います。

一方で地域委員会というのは、第五次総合計画の中でも位置づけていきますが、もう少し広い議論が必要だと思っています。多摩市のエリアをどのように区分けしていくのかとか、既存のコミュニティセンターの運営協議会、青少年問題協議会の地区委員会、社会福祉協議会が進めている地域福祉委員会、これらとどういった違いがあるのか、またどう関連付けていくのか、そういったところもきちんと議論して、地域委員会のあるべき姿というものを、市民の皆さんと一緒に議論をしながら示していく必要があると思っています。

【多摩市・阿部市長インタビュー(2)に続く】

[参考リンク]

ようこそ市長室へ (多摩市ホームページ)
平成22年第2回多摩市議会定例会市長所信表明(阿部市長) (多摩市ホームページ)

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update: 2010年8月11日