永山駅前緑地「さえずりの森」の保全活動| 多摩ニュータウン.com

永山駅前緑地「さえずりの森」の保全活動

永山駅の南西(永山2丁目)に、ニュータウン開発前の多摩丘陵の面影を残す雑木林、通称「さえずりの森」がある。5月15日(土)午前、「永山駅前雑木林保全育成の会」による保全育成作業が行われた。

この日の作業参加者は約10人。初参加した若い男性もいて、中高年主体の既存メンバーから歓迎されていた。「さえずりの森世話人」の江川美穂子さんによると、多いときでは20人以上が作業に集まることもあるとか。

作業は、永山ハイツ3号棟の横にある入口広場の清掃と除草に始まり、林の中での枯れ枝とゴミの回収、倒木の移動、遊歩道の階段に面した斜面の雑草刈りと続く。この斜面には自生ユリの新芽がところどころに生えてきており、保護するためマーキング用の小枝を挿しながら、それ以外の雑草を注意深く鎌で刈っていく。

作業の途中で、ベテランのメンバーが地面近くに生えた平たい葉を持ち上げ、「これを見て」と声をかける。ぱっと見たところ落ち葉にまぎれて目立たないが、よく見ると暗紫色のかたまりのようなものがいくつか確認できる(右の写真)。これはタマノカンアオイ(多摩の寒葵)という近年個体数が減ってきている植物の花なのだそうだ。

この日は、恵泉女学園大学(多摩市南野2-10-1)人間社会学部国際社会学科の谷本寿男教授および荒又美陽准教授の両ゼミ生の見学もあった。海外での自然環境保護や国際貢献について学ぶ前に、まず身近な多摩にある自然に目を向けることが大切という考えから、谷本教授は毎年このさえずりの森に学生たちを連れてくるという。

案内役を務めるのは、東京教育大学で植物生態学を専攻したのち出版社に勤務し、多摩丘陵など身近な環境で観察できるさまざまな植物を紹介した『緑のエッセイ――身近な自然をたずねて』(新日本出版社)などの著書もある村山幸三郎さん(左の写真奥)。1977年に永山に入居し、以来この雑木林に親しんできたとのこと。

最初に学生たちに配られた村山さん手描きの地図は、等高線入りの全体の見取り図に、スギ、ヒノキ、アカマツといった常緑樹や、コナラ、クヌギ、ホオノキをはじめとする落葉樹など、一本一本の樹木の位置が書き込まれた労作。1ヘクタールほどの林の中でも、場所によって常緑樹が集まっていたり落葉樹が優勢だったり、といった植生の傾向が分かりやすく示されている。

その後、観察遊歩道に入り、学生たちを先導しながら、代表的な樹木や草花の特徴、見分け方を説明する村山さん。普段はつい漫然と「木」「林」としか認識していないものだが、実際は多様な種の植物の集まりであり、一本一本に個性と魅力があることを改めて思い知らされる。村山さんは口頭で説明するだけでなく、葉に触れたり匂いをかいだり、ウグイスなどの野鳥のさえずりに耳を傾けるなど、五感で環境を体感するよう促すことで、巧みに学生たちの興味を喚起していた。

「ほおのき沢」の開けた場所に生えたコウゾの木の前では、谷本教授(写真左)が「コウゾは和紙の原料になり、日本の紙幣もコウゾの繊維を使っているおかげで、外国の紙幣より質がいい」とワンポイントレクチャー。日本のものづくりを支えてきた貴重な木がこんな身近な場所に自生していることに驚かされる。

約一時間の見学で、このこぢんまりとした林に驚くほど多様な植生が保たれていることが確認できた。駅と住宅地の至近に豊かな自然環境に触れられる場所があることを嬉しく思うとともに、地道な保全活動を継続している保全育成の会のメンバーたちに改めて感謝の意を表したい。(高森郁哉)

さえずりの森(永山駅前雑木林保全育成の会)

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update: 2010年5月18日