『戦場へ征く、戦場から還る』著者の神子島健氏が講演| 多摩ニュータウン.com

『戦場へ征く、戦場から還る』著者の神子島健氏が講演

神子島健氏東京大学助教で社会学者の神子島健氏による講演会が1月18日、ベルブ永山の消費生活センターで開催された。東京大学教授で九条の会事務局長も務める小森陽一氏との対談もあり、近代日本文学を通して戦争を検証している2人の研究者の講演に市内外から集まった約50人の聴衆が熱心に耳を傾けた。(取材・文=木内慧)
この講演会は、神子島氏の新著『戦場へ征く、戦場から還る』(新曜社)の出版を記念したもので、二部構成。前半は「『戦争責任』と『戦場へ征く、戦場から還る』」として神子島氏が講演し、後半には「『戦場へ征く、戦場から還る』と現在」と題した小森氏との対談が行われた。

前半の講演で神子島氏は、93年当時の河野洋平官房長官が旧日本軍の従軍慰安婦に関する調査の結果を発表した、いわゆる「河野談話」の見直しを示唆していることについて「河野談話を見直すということは、日本の政府や社会が歴史的責任をどう捉えるかということ」と話し、従軍慰安婦問題の存在を否定しようとしている勢力へ疑問を示した。
しばしば議論される「強制の有無」については、焦点を「女性への暴力」と「人身売買」に当てるべきだとし、軍隊という特殊な環境の中で生まれた公娼制度と地続きの問題であると指摘するなど、従軍慰安婦問題の歴史的背景を当時の文学作品の引用も交えつつ語った。

小森氏と神子島氏対談では、小森氏が「2013年という年は第二次安倍晋三内閣も発足し、『戦場―』という題名が非常に意味深長になっている。戦場から還るという面をしっかり検証して来なかった日本が、再び戦場へ征く国になるかもしれないというところに差しかかっている」と、この本のテーマと現在の状況との関連性について指摘。これに応えて神子島氏は、「戦場から還るということが戦後十分に問われてこなかった。戦時中に中国から戻ってきた人の話が歴史学の中でほとんど書かれていないなと思った。00年代にイラクに行った自衛隊員がやってきた事が全く検証されていない。この二つが重なってこの本に書いたような問題意識に展開していった」と語った。
質疑応答では、「どのようにしたら多くの人が市民運動に参加するようになるか」との質問に対し、神子島氏は「私は普段の会話の中に話を混ぜ込んでいる。関心のありそうな相手に突っ込んで議論していって、『こういう問題もあるんじゃないの』といったような感じで話をするようにしている」と、日常会話の中で問題意識を共有することの有効性を自らの実践を踏まえて説いた。小森氏は、「議論をすることが一番大事なのだが、今の若い人達からはみんなが集まって議論や討論をする場が奪われている。運動と学ぶことを連動させるには、まずは時間と居場所を作ること。その様な流れが3.11後の直接民主主義的な動きの中で生まれてきているように思う」などと話した。

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update: 2013年1月20日